10/25/2013

映画グランド・イリュージョンネタバレあり感想

映画「グランド・イリュージョン」、すでに日本でも劇場公開されましたので
ネタバレありの感想を書いてみます。(ネタバレなしの感想はこちら
感想と言うよりは、映画の要所要所に関してあれはああだった、こうだったと
書いているだけなので、それほど深い考察があるわけではないです。はい。

まずこの映画、伏線がストーリー上もマジックの表現上も
とても丁寧に作られていると思います。
マジックの表現上の伏線・・・と言いますか「ここであれをやった」ことにする
映像的表現が割と律儀に入っています。しかも、初見では気付きづらいように
上手に編集とカメラアングルで工夫されています。
例えば、冒頭のNYのフェリー上でスプーン曲げのやり方を見破った乗客から
腕時計をスリ取るところ、乗客の一人が隠されたスプーンを探り当てる短いカットの
積み重ねの中に一瞬だけジャックが客の腕時計に手をかけるシーンが混ざっています。

それ以外にも手錠の鍵を缶の中に入れたことを暗示するカットなどなど。
それらがきちんと、ときには別の意味を持つシーンの中に混ぜられ、
ときには編集のリズムの中に紛れ込まされていて
まさに「他に注意を引いておいて本質に目を向けさせない」というのを
地で行く編集となっています。

また、劇中で伝説のマジシャンとして語られるライオネル・シュライクですが
彼は映画の中では有名なマジシャンという位置づけで、
冒頭で映るダニエルの室内にもライオネルのポスターが貼ってあるのが
本当に一瞬だけ見えます。本当に気付きづらいですけども。

編集とカメラアングルで隠すと言う点でもう一つ、ピンポン球のすり替え。
実践的な観点で考えると一つの確実な方法を三人が使うべきところですが
映画的には三者三様のやり方の方が見栄えがしますね。
とくに半球をピンポン球に被せるというのは片手で正しい位置に入れるのは難しいし
何しろアトラスが最後に客席に投げちゃって○から本当であればリスキー過ぎます。
けど、映画的にはありな範囲でしょう。
これ、演技のシーンでは全然そんなことをせずに解説のシーンのときにだけ
すり替えの動作を演じているというよりは演技のシーンでは編集でぎりぎりのところで
見えないようにしている(と見えるように<実際はどうあれ)と感じました。
なかなかフェアかなと。

取り調べのシーンでわかりやすい伏線はメリットがディランに
父親の問題を抱えていると言うところ。これこそが動機となっているわけです。
ここでのディランは正体を明かさないまま上手に話の方向をコントロールしている
第五のホースマンという役を上手に演じていると思います。

一方でわかりづらい伏線と言えば、これは最初は私も気付かなかったのですが
移動中のジェット内でアトラスがアーサーにメンタリズムを仕掛けるシーン。
あれは機内でのお遊びかと思ったら(そう思わせるようになっているのですが)、
そうではなくて、あのやりとりの中でアーサーの個人情報を手に入れて
彼の銀行口座に進入する足がかりとしていた、ということなんですね。

もう一つわかりづらいところで言えば、そもそも四人が最初に集められ、
その後、彼らのアジトとなるNYの部屋。
あれって、元々はディラン親子の部屋だったようです。
それを暗示するシーンもありましたね。気付いたでしょうか?

もちろん、本気でつっこもうと思えば「それは偶然に頼りすぎでは?」とか
「それ、どうやっても成立しないから」とか、そういう点はありますが、
観ている際はさほど気にならないレベルですし、
それをわざわざ突っつくのは野暮というものでしょう。
その意味で世界観とフィクションが上手にバランスしていると思います。

物語中で、木の幹からサインされたカードを出すマジックのエピソード、
マジックは長い時を経て準備されているというあれですが、
実際にそんなことをするマジシャンがいるのか? って話になると
マジックに詳しい人ならピンと来る名前があるはずで
実際、チャンスを見るとそこに何かを仕込み、演じる機会が訪れるまで
じっと待つ、というマジシャンが歴史上におりました。
この映画のエピソードもきっとそれが元となっているのではないかと。

最後にマジック的に気になるクレジットはこの辺でしょうかね?

この映画、続編が決定したらしいです。
続編と聞くと身構えてしまうのですが、
是非また楽しませてもらえることを期待しております。

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